top of page

危機的出血と大量自己血輸血

2019年10月28日
読了時間: 2分

更新日:2023年8月17日

手術をすれば少なからず出血はつきものです。それが制御できないものだとしたら、皆様はどうされますか?もしその患者が大型犬だとしたら、それを賄うための輸血用血液を用意するのはなかなか困難です。また、大量輸血にはそれなりの副作用が伴います。

今回の論文は、手術中に血管を損傷したことによる大出血を自己血大量輸血とダメージコントロールサージェリーで乗り越えた症例に関するものです。紹介されている方法は、投与法として理想的ではありませんが、緊急時には命を救う手助けになるかもしれません。

(担当:吉田、瀬川、呰上)


大量自己血輸血とダメージコントロールサージェリーにより危機的出血から脱却した犬の一例


著者:Ghosal RDK, Bos A.

掲載誌:J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2019 Jul;29(4):439-443. PMID:31228336

目的:整形外科手術中に直面した末梢血管からの危機的出血に対して血球洗浄や抗凝固処理をせず、非滅菌下で大量自己血輸血を行った犬の一例を報告する。また、ダメージコントロールサージェリーも同時に実施した。

症例:6歳齢、48kgのラブラドールレトリバー、去勢雄。大腿骨頭および骨頸部切除術の際に大血管を損傷し大量出血が生じた。その際、清潔だが滅菌されていないサクションのボトルから血液を回収して凝固塊を取り除き、フィルター付きの輸血用ラインにてそのまま返血した。結果的に総血液量の約58%を2時間以内に自己血輸血した為、大量輸血の基準に達した。なお、手術自体は損傷した血管を結紮し、術野をパッキングした後に一度中止した。

術後、血液凝固異常が生じた為、2単位の新鮮凍結血漿を投与した。なお、ヘモグロビン尿が認められたものの、18時間以内に改善した。初回の手術から3日後、再手術を行い無事に終えることができ、その翌日に退院した。患肢には顕著な浮腫が見られたが、6日後には改善し、それ以外の重篤な合併症は起こらなかった。

考察:本症例では、血球洗浄や抗凝固処理を行わず、非滅菌下で回収した血液を自己血輸血して危機的出血を乗り越えることができた。今回の処置は決して理想的とは言えないが、目の前で大量出血を起こした症例に対するこのような自己血輸血は、救命救急の一助となる可能性が示唆された。また、本症例では同時にダメージコントロールサージェリーを行ったことも注目すべき点と捉えている。

 
 
 

最新記事

すべて表示
誤解凍の血漿製剤

新鮮凍結血漿は有効性を維持する目的や細菌増殖リスクを減らすためにも、解凍後、速やかに使用することが求められています。しかし今回の論文では、冷凍庫のドアがひと晩意図せず開け放たれたままアラームも正常に動作せず、犬の新鮮凍結血漿が11検体、猫の新鮮凍結血漿が7検体、猫の保存凍結血漿が5検体誤まって解凍されてしまった、という不幸な事故から得られた血漿製剤の有効性に関するデータを紹介しています。 結論とし

 
 
 
犬の血液型Kai1とKai2

これまで新しい血液型としてDalについては何度か取り上げたことがありますが、Kai1とKai2について取り上げたことがありませんでした。2017年に韓国の研究者が発見した血液型であり、Kaiとは韓国語で犬のことを指すそうです。この血液型は異型輸血により同種抗体が産生されることから、2回目以降の輸血では溶血性輸血反応を生じる恐れのある抗原として重要視されています。また、モノクローナル抗体が作製された

 
 
 
猫と犬の異種間交差適合試験

以前、犬の濃厚赤血球液を猫に異種間輸血した文献を紹介しましたが、今回はIn vitroにおける猫と犬の異種間での交差適合性について着目した研究です。結果、あくまでIn vitroではありますが、B型猫はA型猫よりも犬の血球の方が3.4倍も適合しやすいという内容に大変驚かされました。特にB型猫は遭遇頻度が低くドナーの確保が困難となりますので、危機的出血時など一刻を争う場面で「不適合と分かっているA型

 
 
 

1件のコメント


内田恵子
2019年10月29日

外科手術中にこのような事態に陥るとパニックになりますが、方法は乱暴とも思えますが急をしのぎ、更にその後の手術でリカバー出来たことに驚きを隠せません。

いいね!

日本獣医輸血研究会 事務局

お問合せ先

Mail: info@jsvtm.org

bottom of page