top of page
jsvtm2018

血液型検査のオモテとウラ

更新日:2023年8月17日

血液型検査にオモテとウラがあることは皆様ご存知でしょうか?すなわち、赤血球の抗原を検査する「オモテ検査」と血清中の抗体を検査する「ウラ検査」のことを指しておりまして、人ではABOのオモテとウラが一致してはじめて最終的な血液型を判定します。オモテとウラが不一致な場合には何かが生じている為、輸血を考慮する前に精査へ進む必要があります。

犬の場合、急性溶血反応で重要なDEA1.1に対する抗体を通常持っていない為、このウラ検査は成立しませんが、猫の場合は異なります。抗体保有率が人のように100%ではありませんが、AB型以外の猫は、抗A、抗B抗体を持っている為、ウラ検査で血液型が判定できる可能性があります。今回の論文では、獣医療ではあまり取沙汰されていない、このウラ検査の有用性に着目しています。ぜひご覧ください。

(担当: 中村、瀬川、近江)


A-B不適合輸血による急性溶血反応を呈した猫における一過性のAB型判定について


著者: Amie Koenig, Christina H Maglaras, Urs Giger.


掲載誌: J Vet Emerg Crit Care. 2020 May;30(3):325-330. PMID: 32141165.


目的: A型の不適合輸血を受けたB型の猫において、免疫クロマトグラフィー法により一過性のAB型と判定した経緯について報告すること。


症例の概要: 7ヵ月齢の去勢済みの長毛猫が、全血輸血を受けた1日後に貧血、血色素尿、血管内溶血を呈して紹介された。輸血時、ドナーと患者のいずれも血液型およびクロスマッチを実施していなかったとの情報であった。来院時、症例は重度の非再生性貧血、高乳酸血症、高ビリルビン血症、ヘモグロビン血症、ヘモグロビン尿、自己凝集試験陽性であり、ショック状態であった。免疫クロマトグラフィー法による血液型検査では、当初、この症例はAB型と判定されたが、A型とB型のドナー赤血球とのクロスマッチ検査 (ウラ検査)により、B型であることが示唆された。そこで、B型の濃厚赤血球液を輸血したところ、明らかな輸血副作用は生じることなく、一般状態にも改善がみられた。以前に輸血された血液が循環から消失した後、症例の血液型はB型であることが再確認された。その後、以前のドナーはA型のシャム猫であることが確認された。輸血前の貧血の原因は不明であったが、現在症例は完全に回復し、ヘマトクリットは正常値を維持している。


報告の新奇性: 不適合輸血後に免疫クロマトグラフィー法を使用して一過性のAB型と診断した最初の報告である。また、溶血性輸血副作用が生じている猫の血液型を正確に判定する為には、クロスマッチ検査 (ウラ検査)が有用であったと言える。

閲覧数:908回0件のコメント

最新記事

すべて表示

犬の急性輸血反応発生率とリスク因子

以前、 犬の急性輸血反応と前投薬に関する文献 を紹介させて頂きましたが、その文献では様々な血液製剤を投与した935件のうち144件(15%)において急性輸血反応がみられ、高頻度で遭遇するものは発熱が77件(8%)、嘔吐が26件(3%)でした。...

ドナー猫とヘモプラズマ感染症

以前、 イタリアにおけるドナー犬の節足動物媒介性病原体の保有率に関する記事 を掲載しましたが、今回はポルトガル、スペイン、ベルギーの動物血液バンクのドナー猫におけるヘモプラズマ感染症の調査に関する報告です。 その動物血液バンクでは、献血された検体の全てがFIV抗体、FeLV...

献血ドナーと薬、そして生肉食について

ドナーが献血を行う上で健康状態の評価は非常に重要です。検査を行い異常が出れば、客観的に健康状態を評価することができます。しかし、検査に出てこない部分をどのように評価すべきなのかは悩ましいところです。 今回紹介する論文は犬のドナーにおいて投薬や食事内容をどのように評価している...

Comments


bottom of page