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輸血適応疾患の検討: 犬のセルトリ細胞腫

今回紹介する論文は犬の骨髄抑制を伴うセルトリ細胞腫症例の治療成績を報告したものです。直接的に輸血について研究した論文ではありませんが、セルトリ細胞腫による汎血球減少を呈した症例に対する輸血適応や輸血用血液の準備を考える上で非常に重要と思われます。本文をみると初診時のヘマトクリット値が8.8%の症例もいれば49.3%の症例もいるようで、かなりばらつきはありますが、皆様の日頃の診療の参考になれば幸いです。ぜひご覧下さい。

(担当: 瀬川)


犬のセルトリ細胞腫に続発した骨髄抑制の治療成績


著者: Sarah A Salyer, Janis M Lapsley, Carrie A Palm, William T N Culp, Alycen P Lundberg, Heidi Phillips, Charly McKenna, Michelle L Oblak, Robyn Hall, Brandan Wustefeld-Janssens, Giovanni Tremolada, Laura E Selmic.


掲載誌: Vet Comp Oncol. 2022 Jun;20(2):484-490. PMID: 34921502


背景: 犬の精巣腫瘍のなかでセルトリ細胞腫は一般的にみられるものの一つであり、潜在精巣の犬において好発する傾向にある。そして多くの場合にセルトリ細胞腫は機能性腫瘍であり、エストロジェンを過剰分泌することで致死的な骨髄毒性を誘発する。


研究目的: セルトリ細胞腫のエストロジェン過剰分泌により骨髄抑制を呈した7頭の犬の治療経過をまとめることを目的とした。


方法: 2011年4月1日から2021年4月1日までのカルテを遡り、骨髄抑制を伴うセルトリ細胞腫に対して手術を行った犬について調査した。


結果: 周術期に7頭中5頭に対して輸血を実施しており、手術前に症例1と症例6は赤血球濃厚液を、症例5は全血を輸血した。加えて症例1は手術前に血小板輸血も実施した。術後に関しては、症例1と症例2が赤血球濃厚液を、症例6は全血を2回輸血した。また、症例3については術後に新鮮凍結血漿および血小板輸血を実施した。

全頭が術後退院可能であり、7頭中6頭が血液検査で改善が認められたものの、2頭は慢性的に血小板減少が続いていた。入院期間中央値は4日間であり、残念ながら1頭が術後4週間で汎血球減少の悪化により安楽死となった。1年生存まで経過が追えた犬は7頭中4頭であり、1頭は術後4ヶ月の時点で来院が無く経過が不明となった。1頭は術後4週間経過しても重度な汎血球減少が続いていたので経口リチウム製剤を開始したところ、4週間で造血再開がみられ、6週間経つと汎血球減少が完全寛解した。


結論: セルトリ細胞腫による骨髄抑制はかねてより予後が厳しいと言われている。しかしながら、今回の報告では全体的に術後良好な転帰を辿る症例が多く、そのうち1頭は経口リチウム製剤に反応して造血再開したように思われた。

 
 
 

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