血液製剤、特に赤血球の保存を目的とした場合は溶血をいかにして防ぐか、が一つの重要なテーマになっています。その為に様々な抗凝固剤や赤血球保存液が流通していますが、今回の論文は溶血の評価方法について検討しています。主観的に肉眼で評価した場合と、客観的に血漿遊離ヘモグロビンを測定する場合とでは、やはりばらつきがみられるようです。血液製剤の保存期間が長期化する場合、一度血漿遊離ヘモグロビンの評価について検討されてみてはいかがでしょうか。
(担当:吉田、瀬川、中野)
犬の保存血の品質評価における溶血度の肉眼的観察および血漿遊離ヘモグロビンの比較
著者:Jaeger B, Reems M
掲載誌:Can Vet J. 2018 Nov;59(11):1171-1174. PMID:30410172 背景:犬の血液を目視にて溶血しているか否か判断し、米国食品医薬品局によって定められた基準と比較した。この基準では血漿遊離ヘモグロビン1%未満の溶血を正常としており、犬の保存血を輸血するか、あるいは廃棄するかの根拠となる。
方法:犬の保存血中の血漿遊離ヘモグロビンをそれぞれ測定し、その溶血が1%未満かどうか調べた。さらに、その保存血の溶血の程度を獣医師と動物看護師が目視で判断し、輸血に適正かどうか評価した。
結果:獣医師と動物看護師の溶血の評価には大きな差があった。動物看護師の方が保存血を輸血不適と判断しがちであった。獣医師は溶血の程度を過小評価もしくは過大評価する傾向にあった。
結論:輸血する前に、保存血中の血漿遊離ヘモグロビン量を測定し、溶血の程度を客観的に評価することを推奨する。
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