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犬におけるMassive transfusion

大量輸血(Massive transfusion)とは、24時間以内に循環血液量の100%以上の輸血を行うことであり、出血性ショックなど危機的出血に対して行われます。輸血と言うと赤血球の補充を目的とする場面が多いですが、大量輸血時には希釈性凝固障害など凝固因子の不足が伴うため、医学では赤血球液:新鮮凍結血漿:血小板濃厚液を製剤単位あたり1:1:1の割合で輸血する大量輸血プロトコール(Massive transfusion protocol)が推奨されています。実際、赤血球だけを優先的に輸血していた頃より救命率の格段の向上が確認されているそうです。

今回紹介するアメリカのタフツ大学から発信された報告では、医原性に生じた大量出血に対して、循環血液量以上の輸血を行っています。輸血詳細は本文からの引用となりますが、出血確認後2時間以内に濃厚赤血球液15ml/kg、新鮮凍結血漿10mL/kgを投与してその他の処置の甲斐もあり一度出血は安定化。しかし19時間後に再出血がみられ、再び2時間以内に67mL/kgの輸血(濃厚赤血球3単位、新鮮全血1単位、新鮮凍結血漿2単位)、続く12時間で95mL/kgの輸血(内訳不明)を行ったとあります。これらを計算してみると、出血の確認から35時間で187mL/kg(約4,600mL)の輸血を行っています。

日本においては輸血用血液のリソース不足から満足いくほどの大量輸血を行うことは非現実的かもしれません。しかしながら今後の展望として、犬の大量輸血に関する貴重な症例報告をぜひご覧下さい。

(担当: 瀬川)

犬の気管支鏡下生検後にみられた致死的喀血


著者: Clayton Greenway, Elizabeth Rozanski, Kelsey Johnson, Lilian Cornejo, Amanda Abelson, Nicholas Robinson.


掲載誌: J Vet Intern Med. 2019 Nov;33(6):2718-2724. PMID: 31663636


8歳齢、24.6kgのMix犬に対して、持続性の発咳の悪化を精査する目的で気管支鏡検査を実施した。肉眼所見において気管粘膜は著しく肥厚し、不整を伴い敷石状の様相を呈していたため、同部位より生検材料を採取した。しかしその直後から気管チューブより大量の血液があふれ出し、生検部位での出血が疑われた。そこで大量輸血を始めとして様々な手段を講じたが、最終的に心肺停止状態となり死亡を確認した。

剖検所見では、以前の犬糸状虫感染による蒼白で怒張した気管支動脈が特徴的であり、生検部位においては粘膜下織の血管まで到達する深い潰瘍が確認された。死因としては、犬糸状虫感染により拡大した気管支動脈の分枝を気管支鏡下生検により損傷したことで出血を生じたものと診断した。本症例報告は一般的に行われる検査手技の稀な合併症を報告したものである。

 
 
 

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