猫の血液型と新生子溶血
- jsvtm2018
- 7月29日
- 読了時間: 3分
今回は輸血療法とは直接関係のない事柄ですが、血液型関連の情報ということで猫の新生子溶血に関する少し古い論文を紹介したいと思います。犬と異なり規則性抗体を持つ猫の場合、初乳に含まれる抗Aあるいは抗B型抗体により新生子溶血をおこす可能性が考えられます。したがって、猫の繁殖や周産期にかかわる獣医療関係者にとって親猫の血液型と交配の組み合わせは軽視できません。
しかし本文中に示された結果を抜粋すると、できることなら血液型異型の組み合わせでの交配は避けるようにしているが、その限りではないと回答しているブリーダーが多くみられています。その一方で、母猫がB型/A型のいずれであろうとも子猫が離乳までの間に死亡する確率は同じく7%程と変わりない結果でした。
ただし母猫がB型かつ父猫がA型という危険性の高い組み合わせの場合、リスクマネジメントとして初乳を与えずはじめの1日程度は代替乳を与えているブリーダーが85%で多かったとも書かれています。なお、初乳を与えないことで易感染状態になるかという質問に対して、大多数のブリーダーがそのような経験はないと回答していました。
少し意外な結果ではありましたが、猫の血液型と交配、新生子溶血について今一度整理されてみてはいかがでしょうか。
(担当: 瀬川)
親猫の血液型が子猫の生存率に及ぼす影響に関するアンケート調査
著者: Eva Axnér
掲載誌: J Feline Med Surg. 2014 Oct;16(10):781-7. PMID: 24423812
要旨: 2ヶ月齢以上の猫は、自分以外の血液型抗原に対して同種抗体を有するようになると言われている。一方、生後12-16時間以内に初乳を飲ませた場合、母猫由来の抗体が子猫に吸収されるため、血液型抗原に対する同種抗体も含まれている可能性が高い。したがって、特にB型の母猫がA型あるいはAB型の子猫を出産した場合は新生子溶血を引き起こす恐れがある。そこで、ブリーダーは生後16-24時間程度、母猫から子猫を隔離しておくことで新生子溶血を回避出来るとも言えるが、初乳を与えないことにより感染症対策を担う受動免疫が移行できない危険性をはらむことが懸念される。
しかしながら、初乳を与えないことやA/B異型の組み合わせから生まれた子猫に実際どの程度健康被害があるのかは明らかにされていないため、B型の母猫とA型の父猫から生まれた子猫、あるいはA型の母猫から生まれた子猫の間で生後間もなくの死亡率にどのような違いがあるのか評価することを本研究の目的とした。また、初乳を飲ませないことで母猫に悪影響はみられるのか、そしてA/B異型の交配に関してブリーダーがどのような考え方や経験を持っているかもあわせて調査した。
実際の調査はブリーダーに対してインターネット上でアンケートを実施した。結果、母猫がB型、A型の如何にかかわらず子猫の死亡率に影響はみられなかった。よって、交配を考える際は同型の血液型であることも重要かもしれないが、それだけではなく遺伝的偏りのないよう包括的に猫の健康が維持されるように計画していくべきと思われた。
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