回収式による自己血輸血

最終更新: 2020年12月23日

今回は、先日の第3回学術講習会の塗木先生のご講演でも話題に挙がっていた自己血輸血に関する論文です。自己血輸血は術前血液希釈式、回収式ならびに貯血式の三種類にわけられ、回収式はさらに洗浄式と非洗浄式に細分類されます。

動物病院で最も多く行われている自己血輸血は、恐らく血腹症例に対する非洗浄式の回収式自己血輸血と思われますが、その血液の中には合併症の原因となる物質が少なからず含まれています。たとえば、回収時に混入した細菌、肺塞栓の原因となり得る脂肪球、あるいは腎機能障害を引き起こす遊離ヘモグロビンなどが挙げられます。したがって、適応には慎重な判断が求められますので、以下の論文でリスクとベネフィットを今一度整理されてみてはいかがでしょうか。

(担当: 瀬川、青木)


Autologous blood transfusion in dogs with thoracic or abdominal hemorrhage: 25 cases (2007-2012)

胸腹腔内出血を伴う犬25症例に対する自己血輸血


著者: Veronica A Higgs, Elke Rudloff, Rebecca Kirby, Andrew K J Linklater.

掲載誌: J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). Nov-Dec 2015;25(6):731-738. PMID: 26193912.

目的: 自己血輸血の適応と予後を示すこと

研究デザイン: 2007年1月-2012年7月における回顧的研究

施設: 私立の二次診療動物病院

対象: 胸腹腔内出血に対して自己血輸血を実施した犬25頭

介入: なし

方法と主要な結果: 2007年1月-2012年7月の診療記録から「自己血輸血」でキーワード検索を行い、個体情報、体重、出血の原因、自己血の回収先、輸血量および方法、抗凝固処理の有無、合併症、予後に関する情報を収集した。

結果、犬25症例において27件の自己血輸血に関する情報が得られた。出血原因は、血管損傷が14頭 (56%)、腫瘍破裂が8頭 (32%)、クマリン系の殺鼠剤中毒による凝固障害が3頭 (12%)であった。自己血の回収先は腹腔内が19頭 (76%)、胸腔内が5頭 (20%)、胸腹腔内が1頭 (4%)であり、回収した血液に抗凝固剤を添加した症例は13頭 (52%)であった。輸血量は中央値29.3mL/kg (2.9-406.9 mL/kg)であり、径210µmの輸血用フィルターを介して輸血したケースが21件 (78%)、径18µmのhemonateフィルターを介して輸血したケースが6件 (22%)であった。

自己血輸血の合併症と思われる所見は、低カルシウム血症が17件中4件 (24%)、溶血が19件中5件 (26%)、凝固時間の延長が5件中4件 (80%)であったが、これらの合併症はいずれも軽微であり臨床的意義は乏しいと思われた。通常の血液製剤をさらに輸血した症例は17頭 (68%)であり、退院できた症例も17頭 (68%)であった。亡くなった症例の死因は、安楽死あるいは出血による心肺停止であった。

結語: 自己血輸血は、血管損傷、腫瘍破裂、殺鼠剤中毒で胸腹腔内出血している症例の循環確保の為の補助的治療である。特に血液製剤が速やかに入手できない場合、出血を制御する根本治療までの中継ぎとして適応を考慮すると良いかもしれない。主要な合併症は低カルシウム血症、凝固時間の延長、溶血であった。

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