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輸血から何日後に再クロスマッチが必要?

jsvtm2018

更新日:2023年8月17日

輸血に関して色々質問を受ける中で、2回目の輸血を行う場合は初回輸血から何日経過していたら再度クロスマッチを行った方が良いか、というものは個人的に最も多い部類に入ります。欧米には4-day ruleというものがあるそうで、輸血後4日経過した場合、すなわち5日後以降は再度クロスマッチを行うべきとされているようです。

少しニュアンスは異なりますが、医学においても輸血前3日以内に採取した血液でクロスマッチを行うべきとか、連日にわたって輸血を受けている患者では少なくとも3日ごとにクロスマッチ用検体を採血するべきとされていますので、輸血翌日にまた輸血を考慮する場合、必ずしもクロスマッチをやり直す必要はないのかもしれません。

しかしながら、今回紹介する論文ではそのクロスマッチの間隔に対して警鐘を鳴らすものであり、最速で輸血12時間後に同種抗体が検出されるようになったとしています。その抗体の臨床的意義にまでは言及されていませんが、一読する価値のある研究報告だと思います。ぜひご覧下さい。

(担当: 瀬川)


連日のクロスマッチを用いた犬の輸血後の同種免疫に関する研究


著者: Lisa Herter, Christiane Weingart, Nina Merten, Nicole Bock, Roswitha Merle, Barbara Kohn.


掲載誌: J Vet Intern Med. 2022 Aug (Online Version of Record before inclusion in an issue)


背景: クロスマッチはドナーとレシピエントの血液の適合性を確認するために行われている。現行の犬におけるガイドラインでは、初回輸血から5日以上経過している場合、あるいは輸血歴が不明である場合はクロスマッチを行うように推奨している。


仮説: 輸血後4日以内に同種抗体を産生される可能性を仮説として、何日目から同種抗体が検出されるようになるか評価した。


供試動物: 貧血の犬21頭に輸血を行い、その後、少なくとも4日間は観察を続けた。持続的に赤血球自己凝集を呈する症例と過去に輸血歴のある症例は除外した。


方法: 前向き観察研究として実施した。DEA1型が一致している血液の初回輸血前、1、2、3、4日後にクロスマッチを行い、症例によっては5-28日後の間でも実施するようにした。クロスマッチは試験管凝集法にて主試験と自己対照のみ行い、反応増強剤は使用しなかった。その他、輸血反応についても調査を行った。


結果: 21頭中、12頭において初回輸血後4日以内にクロスマッチ陽性反応を確認した。凝集の程度を4段階で4+が最大凝集として評価した場合、いずれも1+~2+であった。4日以内にクロスマッチ陽性を呈した症例に関して、貧血の種類、赤血球製剤の保存期間、免疫抑制療法の有無、輸血量との間に因果関係はみられなかった。それ以外の4頭においては、輸血から6-13日後にやはり1+~2+程度のクロスマッチ陽性反応を確認した。


結論および臨床的意義: 最も早いと輸血翌日に同種抗体が検出されたことから、輸血後の日数に関係なく、2回目以降の輸血を考慮する場合はその都度クロスマッチを行うべきと思われた。


図1. クロスマッチの顕微鏡的評価 (500倍)。(A)クロスマッチ陰性、(B) クロスマッチ陽性: 1+、(C)クロスマッチ陽性: 2+、(D)クロスマッチ陽性: 3+、(E)クロスマッチ陽性: 4+。


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