top of page

DEA1.1判定の難しさ

更新日:2023年8月17日

日本国内で判定可能な犬の血液型と言えば、共立製薬株式会社より販売されている「ラピッドベット®-H 犬血液型判定キットII」を用いた犬赤血球抗原(DEA)の1.1のみになります。この血液型は急性溶血性輸血副作用を回避する目的で重要ですが、キットを使用していて恐らく誰しも感じたことのある不安感、すなわち、自分の判定は本当に正しいのだろうか、、、?

しかし、その不安感は正しく、検査に精通した技師さんが検査~判定を行っていても、ある一定の確率で偽陽性、偽陰性が出ることが指摘されています。過去の研究では、偽陽性を回避する為に2+以上の凝集をDEA1.1陽性とする、と明記した論文もあります(Am J Vet Res. 2012;73(2):213-219)。今回こちらで紹介する研究では、そのような先行研究を受けて改めてカード凝集法のカットオフ値について調査しています。

検査に絶対が無いということは意識しておく必要がある一方、当研究会の過去の学術講習会の内容(近日中に会員専用ページで公開予定)等で復習を繰り返し、日頃から正確な血液型判定を心掛けるようにしましょう。(担当: 中村、瀬川、山崎)


カード凝集法によるドナー犬のDEA1型判定: ROC曲線を用いた適切なカットオフ値の決定


著者: Daniela Proverbio, Roberta Perego, Luciana Baggiani, Eva Spada.


掲載誌: Vet Clin Pathol. 2019 Dec;48(4):630-635. PMID: 31650574


背景: カード凝集法によりDEA1型陽性を定義する適切なカットオフ値は、検査をドナーまたはレシピエントのどちらに対して行うかによってわずかに異なる。すなわち、急性溶血性輸血副作用を回避する目的で、レシピエントに対してはDEA1型偽陽性、ドナーに対してはDEA1型偽陰性があってはならないからである。


目的: ドナー犬におけるDEA1型判定の適切なカットオフ値をROC曲線により評価すること。


方法: 100頭のドナー犬のEDTA抗凝固血液を使用し、免疫クロマトグラフィー試験紙法とカード凝集法によりDEA1型の判定を行った。また、両試験における温度、保存時間、および抗凝固剤の影響を評価した。両試験の一致度を比較するため、コーエンのカッパ係数(κ)を算出した。標準法として免疫クロマトグラフィー試験紙法を使用してROC曲線を作成し、カード凝集法の信頼性を評価した。


結果: 全サンプルの86%でカード凝集法と免疫クロマトグラフィー試験紙法の結果が一致した。DEA1型判定および凝集の程度は、コーエンのカッパ係数によるとそれぞれ良好、中程度の一致であった。カード凝集法では、ROC曲線が0.910の曲線下面積(AUC)を示し、カットオフ値≥1+の凝集で最大感度を示した。室温で最長1週間、冷蔵で最長1か月保存されたEDTA抗凝固血液は、4±2℃で最長1週間保存されたCPDA-1抗凝固血液と同様のDEA1型判定結果であった。


結論: カード凝集法によるDEA1型判定の信頼性は、免疫クロマトグラフィー試験紙法よりも低い可能性が示唆された。ドナー犬のスクリーニング検査としてカード凝集法を使用する場合、感度を高めて偽陰性を回避する目的で、カットオフ値を≥1+の凝集とすることが推奨される。


※一部、本文より抜粋して加筆、修正させて頂きました。

閲覧数:986回0件のコメント

最新記事

すべて表示

腹腔内出血と輸血適応判断基準

これまでにも何度か腹腔内出血と輸血に関する記事をあげてきたように、腹腔内出血は遭遇する頻度の高い病態であり、同時に輸血適応の判断が速やかに求められる病態でもあります。一方、腹腔内出血時の輸血適応判断は各獣医師の経験則に基づくところが大きく、輸血適応の基準に関して科学的に検討されている報告は多くありません。 そこで、ご存じのように急性出血時にPCVが減少するまでには数時間要することがあると言われてい

献血ドナーリクルートの障壁

犬や猫における献血を成功に導くために、まずはご家族の献血に対する認知度を高める必要があることは以前のJournal clubで紹介させて頂きました。今回は同じ研究グループが、ドナーの継続性に関して何が障壁となっているのかを解析した報告です。 以下に示したAbstractの中では大まかな分類でしか示されていないのですが、ドナー登録や継続がうまくいかない理由として「疾病によるもの」は肝疾患、心疾患、慢

クロスマッチとクームス血清

獣医療で一般的に行われているクロスマッチは、主にIgMによる不適合輸血を防ぐ目的で行われています。一方、医療ではIgGによる不適合輸血を回避する目的で、クームス血清を用いて検査感度を高めた「間接抗グロブリン試験」もあわせて実施しています。なぜクームス血清を用いるかは皆さまご存じのことと思われますが、IgG単体では赤血球凝集を引き起こすことができない=クロスマッチで検出できないとされているからです。

Comments


bottom of page