DEA1.1判定の難しさ

最終更新: 2020年9月8日

日本国内で判定可能な犬の血液型と言えば、共立製薬株式会社より販売されている「ラピッドベット®-H 犬血液型判定キットII」を用いた犬赤血球抗原(DEA)の1.1のみになります。この血液型は急性溶血性輸血副作用を回避する目的で重要ですが、キットを使用していて恐らく誰しも感じたことのある不安感、すなわち、自分の判定は本当に正しいのだろうか、、、?

しかし、その不安感は正しく、検査に精通した技師さんが検査~判定を行っていても、ある一定の確率で偽陽性、偽陰性が出ることが指摘されています。過去の研究では、偽陽性を回避する為に2+以上の凝集をDEA1.1陽性とする、と明記した論文もあります(Am J Vet Res. 2012;73(2):213-219)。今回こちらで紹介する研究では、そのような先行研究を受けて改めてカード凝集法のカットオフ値について調査しています。

検査に絶対が無いということは意識しておく必要がある一方、当研究会の過去の学術講習会の内容(近日中に会員専用ページで公開予定)等で復習を繰り返し、日頃から正確な血液型判定を心掛けるようにしましょう。(担当: 中村、瀬川、山崎)


A card agglutination test for dog erythrocyte antigen 1 (DEA 1) blood typing in donor dogs: Determining an appropriate cutoff to detect positivity using a receiver operating characteristic curve

カード凝集法によるドナー犬のDEA1型判定: ROC曲線を用いた適切なカットオフ値の決定


著者: Daniela Proverbio, Roberta Perego, Luciana Baggiani, Eva Spada.

掲載誌: Vet Clin Pathol. 2019 Dec;48(4):630-635. PMID: 31650574

背景: カード凝集法によりDEA1型陽性を定義する適切なカットオフ値は、検査をドナーまたはレシピエントのどちらに対して行うかによってわずかに異なる。すなわち、急性溶血性輸血副作用を回避する目的で、レシピエントに対してはDEA1型偽陽性、ドナーに対してはDEA1型偽陰性があってはならないからである。

目的: ドナー犬におけるDEA1型判定の適切なカットオフ値をROC曲線により評価すること。

方法: 100頭のドナー犬のEDTA抗凝固血液を使用し、免疫クロマトグラフィー試験紙法とカード凝集法によりDEA1型の判定を行った。また、両試験における温度、保存時間、および抗凝固剤の影響を評価した。両試験の一致度を比較するため、コーエンのカッパ係数(κ)を算出した。標準法として免疫クロマトグラフィー試験紙法を使用してROC曲線を作成し、カード凝集法の信頼性を評価した。

結果: 全サンプルの86%でカード凝集法と免疫クロマトグラフィー試験紙法の結果が一致した。DEA1型判定および凝集の程度は、コーエンのカッパ係数によるとそれぞれ良好、中程度の一致であった。カード凝集法では、ROC曲線が0.910の曲線下面積(AUC)を示し、カットオフ値≥1+の凝集で最大感度を示した。室温で最長1週間、冷蔵で最長1か月保存されたEDTA抗凝固血液は、4±2℃で最長1週間保存されたCPDA-1抗凝固血液と同様のDEA1型判定結果であった。

結論: カード凝集法によるDEA1型判定の信頼性は、免疫クロマトグラフィー試験紙法よりも低い可能性が示唆された。ドナー犬のスクリーニング検査としてカード凝集法を使用する場合、感度を高めて偽陰性を回避する目的で、カットオフ値を≥1+の凝集とすることが推奨される。


※一部、本文より抜粋して加筆、修正させて頂きました。

Figure 1. カード凝集法による凝集の程度の違い

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