第4回学術講習会の中で、Association of Veterinary Hematology and Transfusion Medicine (AVHTM) が2020年の12月に作成した輸血反応に関するコンセンサス・ステートメントを紹介させて頂きましたが、このたび、International Society of Feline Medicine (ISFM) が猫の輸血療法ガイドラインを発表しました。
当ガイドラインは全20ページ程+動画と大変ボリューム感のあるものですが、Journal clubで紹介できるのは詳細をうかがい知れないAbstractのみであり大変恐縮致します。皆様もこのガイドライン全文をぜひ手に取って頂きたく思いますが、今後の学術講習会などを通じて皆様へ紹介、あるいは当研究会としても日本の現状に即した指針を作成できるように邁進していきたいと思います。今後ともお力添えの程、よろしくお願い申し上げます。
(担当: 瀬川、久末)
2021年版 猫の血液製剤の作製および投与に関するISFM総合指針
著者: Samantha Taylor, Eva Spada, Mary Beth Callan, Rachel Korman, Ellie Leister, Paulo Steagall, Remo Lobetti, Mayank Seth, Séverine Tasker
掲載誌: J Feline Med Surg. 2021 May;23(5):410-432.
ガイドラインの意義: 血液疾患の治療を考える上で、臨床家にとって血液製剤が身近なものとなりつつあり、貧血や血液凝固異常症例に対しては救命につながる重要な治療法となる。そのため、ドナーが適切に選ばれていることや、輸血療法により症例の病状の改善が期待できることは必須である。一方、輸血により合併症を生じる場合もあるが、その多くは適切なドナーの管理、レシピエントの適応判断、血液型に関する理解、モニタリングにより防ぐことが可能である。
ガイドラインで取り扱う課題: 輸血療法は救命に直結する治療法であるが、何の準備もなく試みた場合、ドナーやレシピエントにとって有害なものとなりかねない。たとえば、猫は赤血球抗原に対する先天的な同種抗体を有する為、血液型不適合により重篤な輸血反応をひき起こすおそれがある。他にも、輸血療法は感染症をレシピエントに伝播させる危険性がある為、ドナーの感染症検査は必須である。そして、ドナーは健康でなければならず、適切な鎮静処置を行って血液を安全かつ無菌的に採取することが、レシピエントに最善な結果をもたらす。また、自己血輸血と異種間輸血は、特定の状況下で考慮される。
ガイドラインの科学的根拠: 国際猫医学会 (ISFM) により組織された小委員会が、文献情報に基づいて当ガイドラインを作成した。血液型判定、クロスマッチ、輸血採血、輸血方法に関して、このガイドラインが臨床家に有益な情報をもたらすことを期待したい。
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