top of page

輸血の4時間ルール

細菌増殖リスクが高まることから輸血は通常4時間以内に終了させるように、という通称「4時間ルール(The 4-h rule)」はご存知でしょうか?これは医学の特に赤血球輸血において70年前から言われているルールのようで、犬や猫の輸血療法においてもその概念は外挿されています。

しかしながら現代では赤血球保存液などの進歩により、医学では4時間ルールを見直す動きも出てきているようです。そこで、今回紹介する文献は犬の血漿輸血を室温で12時間かけて実施した場合、細菌増殖リスクが高まるかどうか、そして血漿輸血としての有効性が維持できているかどうかを調べたものです。

結論としては、12時間かけて輸血を行ったとしても大きく品質が損なわれることはなかったようなので、たとえば心機能が低下していて緩徐に輸血を行わなければならないような症例にとっては心強いエビデンスとなりました。赤血球輸血に関しても同様な研究を期待したいところですが、本文もぜひご一読頂ければと思います。

(担当: 瀬川)


室温で12時間かけて犬の血漿輸血を行った場合の細菌汚染リスク、アルブミン濃度や凝固因子の安定性への影響評価


著者: Ignacio Mesa-Sanchez, Rui R F Ferreira, Carles Blasi-Brugué, Rafael R de Gopegui, Augusto J F de Matos

掲載誌: J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2023 Sep-Oct;33(5):534-539. PMID: 37551052


目的: 室温で12時間かけて犬の血漿輸血を行った場合の細菌増殖リスクやアルブミン、凝固因子の安定性を評価すること。


研究デザイン: Ex vivo研究


研究施設: 大学附属動物病院と動物用血液バンク


供試動物ならびに実験介入: なし


研究方法: 犬に新鮮凍結血漿を輸血する際の手技を生体外で再現して研究を実施した。輸血開始時(H0)、4時間後(H4)、12時間後(H12)の時点で血漿サンプルを採取し、細菌培養検査、アルブミン濃度測定、凝固第V、VII、VIII、IX因子活性測定を行った。


主要な結果: 細菌培養検査は全検体陰性であった。第VIII、IX因子活性とアルブミン濃度はいずれの血漿サンプルも有意差がみられなかった(第VIII因子活性: H0 中央値105.5% [範囲75.6-142.0%]; H4 中央値107.8% [範囲75.0-172.7%]; H12 中央値112.1% [範囲81.7-171.0%]、第IX因子活性: H0 中央値119.3% [範囲89.1-175.9%]; H4 中央値123.1% [範囲72.5-172.7%]; H12 中央値118.3% [範囲86.6-177.5%]、アルブミン濃度: H0 中央値21.0 g/L [範囲17.0-23.0 g/L]; H12 中央値20.0 g/L [範囲17.0-24.0 g/L] )。一方、わずかではあるが第V因子活性はH0と比較してH4とH12が有意に増加した(H0 中央値107.0% [範囲71.0-159.0%]; H4 中央値117.7% [範囲71.0-176.7%], P=0.002; H12 中央値116.2% [範囲71.0-191.6%], P=0.001)。また、第VII因子活性はH0よりH4、H4よりH12の方が有意に増加した(H0 中央値115.4% [範囲70.6-183.7%]; H4 中央値118.2% [範囲82.7-194.6%], P=0.005; H12 中央値128.7% [範囲86.4-200.0%], P=0.002)。


結論: 室温で12時間かけて血漿輸血を行ったとしても、細菌増殖リスクやアルブミン、凝固因子の安定性という点で臨床上問題となるものはないように思われた。

 
 
 

最新記事

すべて表示
猫における回収式自己血輸血

避妊手術の最大のリスクのひとつとして術中および術後出血が挙げられますが、出血量によっては輸血療法を考慮する必要があると思われます。その場合、一般的には他家血輸血と言って他のドナーから献血された血液をレシピエントに投与することになりますが、即座に血液が調達できないケースはしばしば存在します。そこで今回紹介する文献では、猫の避妊手術後に腹腔内出血している血液を回収し、輸血用のフィルターを通して自己血と

 
 
 
犬の輸血の有効性および副反応リスク

先月の猫の急性輸血反応発生率とリスク因子に続いて、今月は再び犬の輸血の有効性および副反応リスクに関する論文の紹介です。先月の論文はアメリカとイギリスの多施設共同研究でしたが、今月の論文はデンマークの一施設から報告された内容となります。 以前の犬の急性輸血反応に関する論文 では発熱性非溶血性輸血反応が4%で最多、急性溶血性輸血反応が2%の症例でみられたとありましたが、今回の論文では症例数ベースでみる

 
 
 
猫の急性輸血反応発生率とリスク因子

以前、「 犬の急性輸血反応発生率とリスク因子 」というタイトルで、犬の急性輸血反応に関する論文を紹介しました。今回はその研究グループの続報で、猫の急性輸血反応発生率とリスク因子というタイトルの論文を紹介したいと思います。 やはり猫においても輸血反応として最も多いものは発熱性非溶血性輸血反応であり、一方、最も警戒するべき急性溶血性輸血反応は本文中に示されていますが3例(0.06%)しかみられなかった

 
 
 

コメント


日本獣医輸血研究会 事務局

〒272-0141千葉県市川市香取1丁目4番10号 株式会社wizoo内

TEL: 047-314-8377

Mail: info@jsvtm.org

bottom of page