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輸血適応疾患の検討: 犬の肝臓腫瘍2

2025年9月30日
読了時間: 3分

以前の記事で犬の肝臓腫瘍に対してどの程度の輸血が必要であるのか調べたオーストラリアの報告を紹介させていただきました。彼らの研究では、主に中央肝区域および右肝区域に発生した肝臓腫瘍に対して手術を行う場合、20頭中12頭(54.5%)で輸血を実施したとありました。一方、今回紹介する論文はアメリカを中心としたグループなのですが、右肝区域に発生した肝臓腫瘍に対して手術を行ったものです。結果、以下にお示しするように70頭中15頭(21.4%)で輸血を実施したという結論でした。

ところで、本邦からも宮崎大学を中心としたグループがつい先日、肝臓腫瘍に対して手術を行った論文を発表しており、本文をみると95頭中39頭(41.1%)で輸血を行ったとありました。ちなみに腫瘍の発生部位は概ね左肝区域5: 中央肝区域2: 右肝区域2の割合だったそうです。

上述のように肝臓腫瘍の切除に対して輸血が必要かどうかは症例の背景により大きく異なるはずですが、これらの三報に共通して言えるのは、肝臓腫瘍の手術を検討する場合は手術前の輸血用血液の準備について検討が必須ということではないでしょうか。手術の前にぜひ参考にされてみて下さい。

(担当: 瀬川)


右肝区域切除した犬70頭の予後解析


著者: Haley D Foster, Brad M Matz, Janet A Grimes, Kelley M Thieman Mankin, Arathi Vinayak, Julius M Liptak, Daniel S Linden, Emily J Kennedy, Kate A Korchek, Won Suk Kim.


掲載誌: Vet Surg. 2025 Aug 5. Online ahead of print. PMID: 40762420


目的: 右肝区域切除を実施した犬の生存期間および合併症に関わる予後因子を明らかにすること


研究デザイン: 多施設共同の回顧的研究


対象症例: 右肝区域に腫瘍を有する犬70頭


方法: 2008~2022年に右肝区域の肝葉切除あるいは肝部分切除を行った症例の医療記録を調査し、単変量ロジスティック回帰分析によりリスク因子を評価した。また、カプランマイヤー曲線を用いて全生存期間ならびに中央生存期間もあわせて評価した。


結果: 手術中の合併症は70頭中38頭(54.3%)でみられ、15頭(21.4%)において輸血が必要であった。手術手技の違いは手術中、手術直後、手術後短期間における合併症の発生に有意差がなく(それぞれp=0.566, 0.756, 0.799)、周術期死亡率は2.9%、手術後30日以内の死亡率は12.1%であった。なお、積極的な輸液や昇圧剤の使用など血圧低下に対する治療の強化が必要な症例は生存期間が短い傾向にあった(P=0.004)。病理検査の結果は肝細胞癌が52.9%と最多であり、肝細胞癌の1、2、3年生存率はそれぞれ77%、55%、12%であった。ただし、1年目で35.3%、2年目で48.8%、3年目で65.8%の症例が術後フォローアップ不能となっている点に注意は必要である。


結論: 右肝区域切除は手術中の合併症リスクが高く、21%の症例で輸血が必要であった。しかしながら、手術中死亡は幸いにみられず、手術手技により合併症発生率に大きな違いはみられなかった。


臨床的意義: 合併症発生率の高さは懸念されるものの、右肝区域の肝葉切除/肝部分切除はこれまで考えられていたものと比較して周術期死亡率が低い可能性が示唆された。

 
 
 

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