top of page

猫の抗A/B抗体

更新日:2023年8月17日

今回の論文は猫において2種類の異なる交差適合試験用検査キットの有用性を調査した論文です。以前、紹介した犬の研究(輸血による同種免疫感作)の猫版と言えるかもしれません。特に注目したいポイントは、検査キットの有用性もさることながら、A型の猫の血漿には抗B抗体が無い、または弱いのではないかという点です。

人間と同様に猫は生まれつき、他の血液型に対する抗体(規則性抗体)を持っていると私達も教育されてきましたが、本研究が今後も支持されるようであれば、猫の血液型研究は新たな局面を迎えるかもしれません。当然の様に受け入れられている血液型に関しても、まだまだ未知の部分が沢山あるということを改めて実感した論文です。是非ご覧ください。(担当:中村、瀬川、近江)


輸血歴の無い猫におけるゲルカラム法を用いた規則性抗体の検出


著者:Isabelle Goy-Thollot , Alexandra Nectoux , Maryline Guidetti , Benjamin Chaprier , Sarah Bourgeois , Catherine Boisvineau , Anthony Barthélemy , Céline Pouzot-Nevoret , Urs Giger

掲載誌:J Vet Intern Med. 2019 Mar;33(2):588-595. PMID:30557453

背景:猫の輸血前検査としてABシステムによる血液型の検査と交差適合試験は重要であり、実施することが推奨されている。

目的:2種類の交差適合試験方法を評価すること。

動物:輸血歴の無い49頭の健康な猫を対象とした。

方法:前向き研究を実施した。猫のABシステムに基づく血液型分類には免疫クロマトグラフィ試験紙およびフローサイトメトリーを用いた。また、交差適合試験にはゲルカラム法と、クームス血清を用いて感度を増強した間接抗グロブリン法を用いた。

結果:母集団はA型34頭、B型13頭、およびAB型が2頭であり、免疫クロマトグラフィ試験紙およびフローサイトメトリーによる結果が完全一致した(r=1、P<0.005)。A型の猫には抗B抗体が弱いか検出されず、B型の猫13頭のうち12頭には強力な抗A抗体が検出された。446検体で交差適合試験を実施したところ、329検体(74%)は適合、102検体(23%)がA-B不一致による不適合であった。加えて、15検体(3%)は、ゲルカラム法では適合であったが、間接抗グロブリン法のみ不適合を示した。そのうち、ABシステム以外での不適合反応を14検体認めた。

結論および臨床的重要性:免疫クロマトグラフィ試験紙を使用した血液型検査は、フローサイトメトリーと同等な正確さを示した。ゲルカラム法と間接抗グロブリン法の結果は概ね一致していたが、ABシステム以外での凝集陽性反応は間接抗グロブリン法だけが検出していた。このような血液型検査キットと感度の良い交差適合試験キットが利用可能であることから、各施設で輸血前検査として実施することを推奨する。しかしながら、本研究はin vitroの研究である為、今回認められたような交差適合試験の不適合性とそれがもたらす臨床的意義に関してはさらなる研究が必要である。


※一部、本文より抜粋して加筆、修正させて頂きました。


図4. A型猫の血漿(CAT2)とA型猫の赤血球(CAT11, 12, 13, 15, 17, 18, 19, 22)で交差適合試験を行った結果を示す。間接抗グロブリン法(AGC)では検出された凝集陽性反応が、ゲルカラム法(GC)では検出されていないことに注目したい。

 
 
 

最新記事

すべて表示
猫と犬の異種間交差適合試験

以前、犬の濃厚赤血球液を猫に異種間輸血した文献を紹介しましたが、今回はIn vitroにおける猫と犬の異種間での交差適合性について着目した研究です。結果、あくまでIn vitroではありますが、B型猫はA型猫よりも犬の血球の方が3.4倍も適合しやすいという内容に大変驚かされました。特にB型猫は遭遇頻度が低くドナーの確保が困難となりますので、危機的出血時など一刻を争う場面で「不適合と分かっているA型

 
 
 
輸血適応疾患の検討: 犬と猫の殺鼠剤中毒

殺鼠剤は急性毒剤と抗凝血剤に大別されますが、獣医療において殺鼠剤中毒というとワルファリンなどクマリン系の抗凝血剤が有名です。クマリン系の殺鼠剤はビタミンKの代謝拮抗剤であり、活性化にビタミンKが必要な凝固第II、VII、IX、X因子を阻害することでその効果を発揮します。したがって、輸血による活性化凝固因子の補充や貧血の是正、ビタミンKの投与がクマリン系殺鼠剤中毒の治療として考えられていますが、以前

 
 
 
献血ドナー犬の合併症調査

以前、献血ドナー猫の合併症調査に関する文献を紹介しましたが、今回は犬の献血における合併症を調査した研究報告となります。本文から少し抜粋すると、1年の間にドナー犬2,776頭、献血回数は合計4,439件と多くのケースを集めておりますが、合併症の発生頻度は37件(0.83%)と低頻度に抑えられていて目を見張るものがあります。筆者たちも考察していましたが、トレーニングを受けた動物用血液バンクのスタッフが

 
 
 

コメント


日本獣医輸血研究会 事務局

お問合せ先

Mail: info@jsvtm.org

bottom of page