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クロスマッチとクームス血清

獣医療で一般的に行われているクロスマッチは、主にIgMによる不適合輸血を防ぐ目的で行われています。一方、医療ではIgGによる不適合輸血を回避する目的で、クームス血清を用いて検査感度を高めた「間接抗グロブリン試験」もあわせて実施しています。なぜクームス血清を用いるかは皆さまご存じのことと思われますが、IgG単体では赤血球凝集を引き起こすことができない=クロスマッチで検出できないとされているからです。

過去のJournal clubでも犬のクロスマッチで間接抗グロブリン試験を実施している文献を紹介してきましたが、間接抗グロブリン試験が犬にも必要なのかどうかを着目した研究はこれまでみられませんでした。そこで今回紹介する文献は、DEA1適合輸血を受けたことのある犬のクロスマッチにおいて、クームス血清を用いた場合(間接抗グロブリン試験)と用いない場合(従来法)でどのように結果が異なるのかについて調べています。

結果、どちらか片方だけ行えば良いという訳ではなく、従来法と間接抗グロブリン試験の両者を行った方がクロスマッチの感度が高まる可能性が指摘されています。もちろん、今回の研究もIn vitroのものであるため、間接抗グロブリン試験でのみ検出された不適合の組み合わせで輸血した場合にどのような輸血反応が起こるのか、その点は未解明であることを念頭に置く必要があります。オープンアクセスの文献なのでぜひ原文とあわせてご覧下さい。

(担当: 瀬川)


輸血歴のある犬においてクームス血清がクロスマッチの感度に与える影響の評価


著者: Alison Thomas-Hollands, Rebecka S Hess, Nicole M Weinstein, Samantha Fromm, Nicole A Chappini, Kimberly Marryott, Mary Beth Callan.


掲載誌: J Vet Diagn Invest. 2024 Jan 11. Online ahead of print. PMID: 38212878


背景と目的: クロスマッチは、特に輸血歴のある犬に再度輸血を行う上では必須の検査である。多くの大学附属動物病院や二次診療施設では試験管凝集法あるいはゲルカラム法によるクロスマッチを行っているが、標準的な方法はいまだに確立されていない。さらにクームス血清を用いることでクロスマッチの感度が向上することは示唆されているが、実際のところは未解明である。そこで本研究は、DEA1適合輸血歴のある犬において、クームス血清を用いたクロスマッチ(間接抗グロブリン試験)とそうでないクロスマッチ(従来法)で結果が異なるのか、評価することを目的とした。


方法: 33頭の症例犬から輸血前および輸血後の検体を採取し、ドナー1-6頭(中央値3頭)とゲルカラム法によるクロスマッチの主試験を行った。結果的に間接抗グロブリン試験と従来法をそれぞれ202件実施し、4名の評価者によって判定した。なお、そのうち3名はそれぞれがどのようなサンプルか分からないように匿名化された状態で行った。


結果: 症例犬33頭中10頭(30%)で輸血後の検体においてクロスマッチ不適合が認められるようになったが、そのうち4頭は間接抗グロブリン試験のみ、3頭は従来法でのみ不適合がみられた。そして残りの3頭はいずれの方法においても不適合が検出された。なお、間接抗グロブリン試験と従来法は適合においてρ=0.34(p<0.001)、不適合においてρ=0.35(p<0.001)程度の正の相関が認められた。また、4名の評価者間の結果の解釈にばらつきは少なく、適合においてκ=0.97(p<0.001)、不適合においてκ=0.77(p<0.001)の高い一致率を示していた。


結論: ゲルカラム法によるクロスマッチの感度を最大限高めるためには、従来法に加えて間接抗グロブリン試験も行うべきと示唆された。

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