猫における回収式自己血輸血
- jsvtm2018
- 15 時間前
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避妊手術の最大のリスクのひとつとして術中および術後出血が挙げられますが、出血量によっては輸血療法を考慮する必要があると思われます。その場合、一般的には他家血輸血と言って他のドナーから献血された血液をレシピエントに投与することになりますが、即座に血液が調達できないケースはしばしば存在します。そこで今回紹介する文献では、猫の避妊手術後に腹腔内出血している血液を回収し、輸血用のフィルターを通して自己血として輸血する方法の安全性について検討しています。
同じ研究者が同時期に研究を行っている別の一報では、避妊手術を行った猫9,513頭中77頭(0.8%)が術中の大量出血を経験し、28頭(0.3%)が回収式自己血輸血を行ったとありますので、輸血が必要となるような大出血の頻度は決して多くありません。しかしながら、万が一、以上の確率でそのような判断を迫られる可能性があるということは事実なので、本論文が皆様の診療の一助になれば幸いです。本文までぜひご覧ください。
(担当: 瀬川)
猫の避妊手術後に自己血輸血を行わざるを得なかった場合の生存率の高さについて
著者: Sharon Pailler, Carolyn R Brown, Jessica K Conn, Veronica H Accornero
掲載誌: J Am Vet Med Assoc. 2025 Oct 8;264(2):158-162. PMID: 41061723
目的: 避妊手術後の出血に対して、自己血輸血を行った猫の生存率および予後因子を調査すること。
方法: 2022年1月1日から2024年7月9日までの間に、5ヶ月齢以上で避妊手術後の出血に対して自己血輸血を行った猫の医療記録を調査した。具体的には臨床兆候、術中所見、追加で他家血輸血を行ったかどうか、生命転帰を評価対象として統計解析を実施した。
結果: 56頭の猫に対して自己血輸血を行っており、そのうちの47頭(83.9%)が生存退院した。重度な子宮水腫や子宮蓄膿症など術中の異常所見が有意に生命転帰に悪影響を及ぼしており、その他の因子はいずれも自己血輸血後の生存に関連がみれらなかった。
結論: 猫の自己血輸血の安全性は高く、犬や猫における一般的な他家血輸血後の生存率に関する過去の報告と同様であった。また、自己血輸血そのものというより、基礎疾患の有無が生存率に悪影響を及ぼしていた。
臨床的意義: 本研究において、手術による腹腔内出血に対して自己血輸血は有用とする結果が得られた。したがって、たとえば他家血輸血が行えない場合、腹腔内だけでなく他の部位であっても血液を回収できて安全に投与できるのであれば、自己血輸血は救命において重要な治療の選択肢のひとつになり得るものと思われた。



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