top of page

猫における初回輸血前のクロスマッチ

更新日:2023年8月17日

前回の記事の更新から5ヶ月も経過してしまい大変恐縮です。今月から月一配信を目標に更新を再開していきたい所存です。さて、現在は第6回学術講習会を開催中ですが、今回も引き続き第5回学術講習会のJournal clubで紹介させて頂いた論文の一部をこちらにお示ししたいと思います。

今回紹介する論文は、猫の初回輸血時にクロスマッチを行う必要があるのかどうかを検証したものです。前提として、ドナーおよびレシピエントのA/B分類による血液型判定は行って適合させた上で、クロスマッチをさらに行うべきかという内容です。

試薬の枯渇により現在は判定出来なくなってしまったMikなど、A/B分類によらない血液型で異型輸血となるリスクを考えると、個人的にはクロスマッチを行いたくなるところです。ただ、クロスマッチは労力を必要とする検査でもありますので、今回の論文の結果を参考に、猫の初回輸血時にクロスマッチを行うことの必要性を、院内で今一度議論されてみるのも良いかもしれません。ぜひご覧下さい。

(担当: 瀬川)


猫の初回輸血前にクロスマッチを行うことの有用性について


著者: K R Humm, D L Chan.


掲載誌: J Small Anim Pract. 2020 May;61(5):285-291. PMID: 32133646.


目的: (1) 輸血歴のない猫においてクロスマッチ不適合がどの程度発生するか、二種類のクロスマッチ方法を用いて評価すること (2) クロスマッチ不適合であることが輸血後のPCV上昇幅にどのような影響を与えるのか評価すること (3) 猫の輸血療法において急性輸血反応やアクシデントの発生頻度を調査すること (4) クロスマッチ不適合により輸血反応が実際生じたかどうか検討すること


方法: 大学附属の動物病院にて、A/B適合輸血を初めて実施する猫を用いて前向き研究を行った。スライド凝集および市販のキットを用いてクロスマッチの主試験、副試験を実施し、体重あたりの輸血量を考慮して輸血12時間後のPCV上昇幅を測定した。また、輸血反応の有無についても記録することとした。


結果: 猫101頭を研究対象とした。スライド凝集によるクロスマッチ不適合は主試験27%、副試験10%であったのに対し、市販のキットによるクロスマッチ不適合は主試験4%、副試験4%であった。いずれのクロスマッチ方法を用いた場合でも、クロスマッチ不適合であることは輸血後のPCV上昇幅に対して悪影響を及ぼさなかった。輸血反応は全部で20頭に生じ、そのうち頻度が高かったのは発熱性非溶血性輸血反応9頭と、溶血性輸血反応の7頭であった。市販のキットによるクロスマッチは、溶血性輸血反応をより正確に予見することが可能であった。


閲覧数:419回0件のコメント

最新記事

すべて表示

輸血適応疾患の検討: 犬の免疫介在性血小板減少症

前回に引き続き、今回も輸血について直接研究した論文ではありませんが、輸血適応について考えることをテーマとして犬の免疫介在性血小板減少症(ITP)に関する論文を取り上げたいと思います。この2024年5月にACVIMからITPの診断に関するコンセンサスが発表されましたのでITPは現在とても話題性の高い疾患です。 今回紹介する論文の中で、一次性ITPの血小板数は中央値5,500/µL(範囲0-26,00

輸血適応疾患の検討: 犬のセルトリ細胞腫

今回紹介する論文は犬の骨髄抑制を伴うセルトリ細胞腫症例の治療成績を報告したものです。直接的に輸血について研究した論文ではありませんが、セルトリ細胞腫による汎血球減少を呈した症例に対する輸血適応や輸血用血液の準備を考える上で非常に重要と思われます。本文をみると初診時のヘマトクリット値が8.8%の症例もいれば49.3%の症例もいるようで、かなりばらつきはありますが、皆様の日頃の診療の参考になれば幸いで

腹腔内出血と輸血適応判断基準

これまでにも何度か腹腔内出血と輸血に関する記事をあげてきたように、腹腔内出血は遭遇する頻度の高い病態であり、同時に輸血適応の判断が速やかに求められる病態でもあります。一方、腹腔内出血時の輸血適応判断は各獣医師の経験則に基づくところが大きく、輸血適応の基準に関して科学的に検討されている報告は多くありません。 そこで、ご存じのように急性出血時にPCVが減少するまでには数時間要することがあると言われてい

Commentaires


bottom of page