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猫の血液と微小凝集塊除去フィルター

犬に輸血を行う場合、ある程度の輸血量になることが多いので血液バッグ+輸血セットの組み合わせになることが多いと思います。この輸血セットには点滴筒の上部に直径175-210μm(テルフュージョン®の場合)のろ過網が付いていて、比較的大きな凝集塊を除去する目的で使用されます。

一方、猫に輸血を行う場合は輸血量が50mL程度と少ないことがほとんどなので、採血した血液を分離バッグなどに移して輸血を行うか、シリンジのまま輸血を行います。前者の場合は犬と同様に輸血セットを用いることができますが、後者の場合はシリンジにHEMO-NATE® BLOOD FILTRATION SYSTEM(Utah Medical Products, Inc.)を接続して凝集塊を除去している文献を海外でみかけます。最近は日本国内でも取り扱いをして下さる代理店が出てきて入手しやすくなりました。

ところで、このHEMO-NATE® BLOOD FILTRATION SYSTEMは直径18μmのステンレス製フィルターであり、新生児の輸血時などに肺塞栓を起こさないよう微小凝集塊除去を目的として作製されています。通常の輸血セットと比較するとフィルターの径が明らかに細かいため、輸血する赤血球に溶血ストレスを与えるのではないかと懸念されることがあり、過去に犬でそのような報告がなされたこともありました。

そこで今回紹介する論文は、HEMO-NATE® BLOOD FILTRATION SYSTEMが猫の血液に溶血ストレスを与えるかどうか調査したものとなります。少なくとも新鮮血に対しては悪影響を及ぼさないという結論になりましたが、本研究を通じて各施設でどのようにフィルターを用いていくか、今一度ご検討されてみてはいかがでしょうか。

(担当: 瀬川)


35日間保存した猫の全血に微小凝集塊除去フィルターが及ぼす影響


著者: Sophia A Morse, Erin T Mooney


掲載誌: J Feline Med Surg. 2022 Feb;24(2):116-122. PMID: 33904795


目的: 18μmの微小凝集塊除去フィルターで処理した猫の新鮮血あるいは保存血の品質を比較すること。


方法: 9頭の猫に献血を依頼し、開放式で採血を実施した。そして献血当日に血液の半分を微小凝集塊除去フィルターで2時間かけて処理し、残りの半分を35日間の保存後に同様にフィルター処理した。得られた検体は①献血当日フィルター処理前(D0-)②献血当日フィルター処理後(D0+)③保存35日フィルター処理前(D35-)④保存35日フィルター処理後(D35+)に分類し、それぞれCBC、溶血率、赤血球脆弱度を評価した。また、D0+とD35+については細菌培養検査も実施した。


結果: D0-とD0+では統計学的に有意な差はみられなかった。D35-はD0-と比較して有意に溶血率、赤血球容積分布幅(RDW)、赤血球脆弱度が増加、ヘマトクリット、赤血球数、ヘモグロビン濃度が低下した(P <0.05)。D35+も同様な結果であったが、加えて平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)もD0-と比較して増加していた。D35+はD35-に対して、MCHのみ有意に増加していた。35日目には9検体中の6検体が溶血率1%を超えており、フィルター処理を行うとさらに2検体、すなわち9検体中8検体が溶血率1%以上を示していた。なお、細菌培養検査は全検体陰性であった。


結論: 新鮮血は18μmの微小凝集塊除去フィルターによる処理で機械的ダメージを受けることはなかったが、保存血ではフィルター処理によりMCHが増加しており溶血の可能性が懸念された為、保存障害を受けた猫の血液の微小凝集塊除去フィルター処理に関しては再考する必要があるかもしれないと思われた。また、その他の指標の変化はフィルター処理というより血液の保存障害によるものが疑わしく、猫の血液の保存方法におけるクオリティコントロールの重要性が再確認されたと言える。

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