top of page

献血のモチベーション

jsvtm2018

更新日:2023年8月17日

皆様、ご自身あるいはご自身の動物は献血していますか?今回の論文は動物用血液バンクや献血に対する飼育者の意識調査に関するものです。この論文はイギリスのグループから出されたものですが、イギリスでは2005年に法律が変わって動物用血液バンクが設立されたようです。その後、増え続ける需要に対して供給が追い付かないようで、飼育者の傾向を探るために本研究を実施したとあります。日本では今のところ動物用血液バンクの整備は法的に厳しいものがありますが、本研究の結果は各動物病院での院外ドナーのリクルートを考える上で非常に参考になると思います。是非ご一読下さい。

(担当:瀬川、丸山)

動物用血液バンクに対する飼育者の理解と献血に対するモチベーション

著者:Wilder A, Humm K.

掲載誌:Vet Rec. 2019 Jun 27. pii: vetrec-2018-105139. PMID:31249068

背景:犬や猫の献血に対する世間の認知度や関心は低く、現状では理解されていないことが多い。したがって、動物の献血に対する飼育者の理解を深めることは、献血に誘致する上で効果的と言えるかもしれない。そこで本研究では、小動物の献血ならびに自身の飼育している動物がドナーになることに関して、飼育者の意識調査を行った。

方法:一次診療機関を受診した158名の飼育者に対してアンケート調査を実施した。

結果:70%の飼育者は、犬や猫が献血できるということを認識していなかった。一方、もし自身の動物が献血規定をクリアしているなら、89%の飼育者が献血をしてみたいと回答した。特に、飼育者がフルタイムで働いていない場合、年齢が70歳以下である場合、献血に対して前向きな姿勢を示していた。

アンケートの自由回答部分に関する主題分析(質的データを分析する手法)では、飼育者の献血に対するモチベーションと懸念に関する回答は以下の4グループに分類された。すなわち、他の動物を救いたいから献血に参加したいという利他的精神に関するものが49%、献血の必要性の認識に関するものが18%、いつかは自身の動物が輸血のお世話になるかもしれないから献血に参加したいという互恵精神に関するものが19%、猫にとって献血はストレスなのではないか、献血しようとしても時間や交通手段がない、献血手技に不明瞭な点がある、など懸念事項に関するものが12%であった。


※abstractの内容に一部わかりづらい点が含まれていた為、本文より抜粋して加筆させて頂きました。

 
 
 

最新記事

すべて表示

秋田犬と献血

秋田犬は赤血球内のカリウム濃度の特性により献血ドナーの対象外とされていることが多いですが、何がどのように問題視されているのか明確に記されていることは乏しいように思います。そこで、今回紹介する論文は直接的に輸血とは関係のないものですが、秋田犬の赤血球がどのように他の犬種と異な...

輸血後のPCVチェック

今回紹介する論文は以前の学術講習会の中で取り上げたことのある、輸血後のPCVチェックのタイミングに関するものです。輸血効果の確認のため、輸血終了後は血液検査を行いPCVが順調に上昇しているかどうかを確認する必要があります。しかしながら、事前に想定していたPCVの上昇幅が最大...

猫の新しい血液型-続報2

前回 に引き続き今回もネコの新しい血液型(FEA)に関する論文のご紹介です。前回は1~5まで存在しているFEAの中でFEA1に注目した論文でしたが、今回はFEA4に注目した論文です。 この論文はFEA4に対する抗体産生や免疫グロブリンのタイプを調査する目的で行われましたが、...

1 Comment


内田恵子
Oct 07, 2019

とても重要な数字と考えます。特に最後の一文「猫にとって献血はストレスなのではないか、献血しようとしても時間や交通手段がない、献血手技に不明瞭な点がある、など懸念事項に関するものが12%であった。」については今後一般臨床家がネコの来院件数を増やすために知っておくべき事実である。この12%のオーナーが安心して病院に来院出来る知識と技術をより広く情報拡散をする必要があろう。近年アメリカのみならずグローバルに普及しつつあるFear Free に診療を行うという概念が日本でも普及してほしい。

Like

日本獣医輸血研究会 事務局

〒272-0141千葉県市川市香取1丁目4番10号 株式会社wizoo内

TEL: 047-314-8377

Mail: info@jsvtm.org

bottom of page