top of page
jsvtm2018

献血ドナーと薬、そして生肉食について

ドナーが献血を行う上で健康状態の評価は非常に重要です。検査を行い異常が出れば、客観的に健康状態を評価することができます。しかし、検査に出てこない部分をどのように評価すべきなのかは悩ましいところです。

今回紹介する論文は犬のドナーにおいて投薬や食事内容をどのように評価しているかを調査した内容です。みなさんは普段どのようにお考えでしょうか?生肉食はときにドナーが病原体に汚染される可能性があり、レシピエントの健康被害や獣医療従事者の人獣共通感染症につながる恐れがあることから、今回話題にあがっています。これまでドナーから献血する際に、おそらく食事内容まではあまり気にされないところのように思いますので、今回紹介する論文がドナーの評価基準について考え直すきっかけになればと思います。ぜひご一読ください。

(担当: 吉田)


犬のドナーにおける薬と生肉食に関する調査


著者: Marie K Holowaychuk.


掲載誌: J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2024 May-Jun;34(3):302-306. PMID: 38809222


背景: ドナーの健康状態の把握および採取した血液の安全性や有効性を確実なものとするため、献血時は常用薬の有無を確認する必要がある。医学では服用してから献血可能となるまでの期間を定めた詳細なガイドラインが存在するが、獣医学では犬の献血の際にどのような薬物が投与可能かという明確な基準は存在しない。


目的: 犬のドナーにおいてどのような薬物の服用を許可しているか、また、生肉食についてもどこまで認めているかを明らかにすること。


方法: 獣医血液・輸血治療協会(AVHTM)のオンライングループに、犬のドナー登録に際し特定の薬物の使用と生肉食の可否を問う簡単なアンケートを配布した。


結果: 回答者の半数以上が甲状腺ホルモンを投薬された犬をドナーとして使用していたが、慢性的に抗ヒスタミン薬を投与された犬については意見が分かれるところであった。なお、抗炎症薬や痒み止めの使用が急性症状に対して一時的であり、十分な休薬期間を経た場合、ほとんどの回答者はその犬のドナーへの復帰を許可していた。また、半数以上の回答者が生肉を与えられているドナーを除外していた。


結論: 犬のドナーが献血をするにあたり、どのような薬物が投与可能か明確な基準はないことが明らかになった。したがって、各施設のドナープログラム作成に最適解を示せるような、エビデンスに基づいたガイドラインが必要である。


閲覧数:165回0件のコメント

最新記事

すべて表示

猫の新しい血液型-続報1

以前、 こちらで紹介 させて頂いた猫の新しい血液型に関する続報を、今回と次回に渡り紹介したいと思います。前回の論文を簡単にまとめると、輸血歴のないA型猫同士に対して様々な組み合わせでクロスマッチを行い、元々有している自然抗体の有無を調査していました。結果、7%の猫はA/Bシ...

献血ドナー猫の合併症に関する大規模研究

猫からの献血を考える際は多くの場合に鎮静処置が必要となるものの、無鎮静の場合でも合併症に困ることは多くなかったとする報告を 以前紹介 させて頂きました。その報告は32頭の猫から115件の献血採血を対象としたものでしたが、今回紹介させて頂く研究はわずか5年のうちに7,812頭...

犬の急性輸血反応発生率とリスク因子

以前、 犬の急性輸血反応と前投薬に関する文献 を紹介させて頂きましたが、その文献では様々な血液製剤を投与した935件のうち144件(15%)において急性輸血反応がみられ、高頻度で遭遇するものは発熱が77件(8%)、嘔吐が26件(3%)でした。...

Opmerkingen


bottom of page