top of page

犬の赤血球濃厚液の有効期限

更新日:2023年8月17日

犬の血液製剤を保存しようとする場合、各施設ごとにその有効期限を設定しなくてはいけません。CPDA-1の血液バッグの表面には35日、MAP液の添付文書には42日が有効期限と書かれていますが、それらはあくまで人の赤血球に対する有効期限を示したものである為、そのまま外挿して良いものかどうかは注意が必要です。

今回紹介する論文は約30年前と非常に古い論文ですが、CPDA-1は今でも用いられている代表的な抗凝固-保存剤です。筆者達は、CPDA-1処理した犬の赤血球濃厚液を「20日」までは少なくとも保存可能としています。残念ながら犬の赤血球濃厚液をMAP液で保存した場合の有効性を評価した論文は今のところみられませんが、今回の論文を踏まえて考えると上述の42日よりも短い可能性が高そうに思います。血液の円滑な有効利用を推進し、適切な輸血療法を行う上で、今後の研究の動向に期待したいと思います。

(担当: 瀬川、久末)


犬の赤血球濃厚液をCPDA-1で保存した場合の有効性


著者: Price GS, Armstrong PJ, McLeod DA, Babineau CA, Metcalf MR, Sellett LC.

掲載誌: J Vet Intern Med. 1988 Jul-Sep;2(3):126-32. PMID: 3225806

目的: 抗凝固-保存剤であるCPDA-1で処理した犬の赤血球濃厚液を保存し、1、10、20、30、40日後にその品質を評価すること。

結果: 上清中のカリウム濃度とナトリウム濃度、MCV、赤血球の脆弱性が保存期間中に増加した(P<0.05)。pH、上清中グルコース濃度、赤血球内の2,3-DPG濃度とATP濃度は減少した(P<0.05)。特に赤血球内の2,3-DPG濃度は保存開始から24時間で54%減少していた(P<0.001)。赤血球濃厚液の輸血後生体内生存率(post transfusion viability: PTV)は保存1日目に90%であったが、40日目には46%まで低下していた(P<0.05)。保存10、20日目の赤血球濃厚液のPTVは米国食品医薬品局(FDA)の基準を満たしていた。

考察: 赤血球濃厚液の保存中に著しく生化学、血液学的な変化が認められたが、20日間保存したものは許容範囲内の品質の変化であった。2,3-DPG濃度の急激な減少は、保存した赤血球濃厚液の酸素運搬能の低下を示す結果であった。保存中に上清中カリウム濃度の上昇がみられたが、赤血球内にカリウムを豊富に持つ特殊な個体という訳ではなく、恐らくATPの不足によるナトリウム/カリウム調節機構の障害が影響していると考えられた。


※一部、本文より抜粋して加筆、修正させて頂きました。


 
 
 

最新記事

すべて表示
猫と犬の異種間交差適合試験

以前、犬の濃厚赤血球液を猫に異種間輸血した文献を紹介しましたが、今回はIn vitroにおける猫と犬の異種間での交差適合性について着目した研究です。結果、あくまでIn vitroではありますが、B型猫はA型猫よりも犬の血球の方が3.4倍も適合しやすいという内容に大変驚かされました。特にB型猫は遭遇頻度が低くドナーの確保が困難となりますので、危機的出血時など一刻を争う場面で「不適合と分かっているA型

 
 
 
輸血適応疾患の検討: 犬と猫の殺鼠剤中毒

殺鼠剤は急性毒剤と抗凝血剤に大別されますが、獣医療において殺鼠剤中毒というとワルファリンなどクマリン系の抗凝血剤が有名です。クマリン系の殺鼠剤はビタミンKの代謝拮抗剤であり、活性化にビタミンKが必要な凝固第II、VII、IX、X因子を阻害することでその効果を発揮します。したがって、輸血による活性化凝固因子の補充や貧血の是正、ビタミンKの投与がクマリン系殺鼠剤中毒の治療として考えられていますが、以前

 
 
 
献血ドナー犬の合併症調査

以前、献血ドナー猫の合併症調査に関する文献を紹介しましたが、今回は犬の献血における合併症を調査した研究報告となります。本文から少し抜粋すると、1年の間にドナー犬2,776頭、献血回数は合計4,439件と多くのケースを集めておりますが、合併症の発生頻度は37件(0.83%)と低頻度に抑えられていて目を見張るものがあります。筆者たちも考察していましたが、トレーニングを受けた動物用血液バンクのスタッフが

 
 
 

コメント


日本獣医輸血研究会 事務局

お問合せ先

Mail: info@jsvtm.org

bottom of page