top of page

猫の輸血用血液製剤の保存

更新日:2023年8月17日

猫は犬と異なり採血量が極端に少なく、保存に適した血液バッグが日本国内では市販されていないことから、血液製剤の保存は課題の多い分野です。今回は、抗凝固剤にCPDA-1を用いた猫の閉鎖式輸血採血ならびに保存が可能なキットを用いて、血液製剤保存後の品質を検討した論文のabstractを紹介したいと思います。(担当:仙波、瀬川、丸山)

CPDA-1で抗凝固処理した猫の輸血用血液製剤の品質評価について

著者:Crestani C, Stefani A, Carminato A, Cro A, Capello K, Corrò M, Bozzato E, Mutinelli F, Vascellari M

掲載誌:J Vet Intern Med. 2018 May;32(3):1051-1059. PMID:29635743

背景: 猫の輸血採血法は、注射シリンジによる開放式採血が一般的である。この開放式により得た血液は保存血液としては適していないため、新鮮全血として使用していることが一般的である。

目的: 猫用に設計された閉鎖式輸血採血キット(TEC 724 Kit, Futurlab Srl)を用いて猫から採血し、4℃で35日間保存した血液製剤の品質評価をすること。

供試動物: 体重5-6.8kgの健康な成猫8頭

方法: 抗凝固剤にCPDA-1が使用されている本キットで採血した猫の血液製剤を35日間保存し、細菌感染の有無、CBC、血液塗抹、pH、浸透圧脆弱性、赤血球の代謝能の指標である2,3-DPG、ATPを1日目から35日まで週1回検査した。また、血漿の溶血指数、乳酸濃度、カリウム濃度、PT、APTT、フィブリノゲン濃度を測定した。

結果: 8検体中、1検体でSerratia marcescensの増殖が35日目に確認された。CBC、赤血球形態、pH、浸透圧脆弱性の検査では明らかな変化は認められなかった。一方、個体差が大きく、初期から低値を示す個体もいたが、2,3-DPG、ATPは有意に低下し、溶血指数、乳酸濃度、カリウム濃度は有意に増加していた。

結論: 今回使用したキットは、猫の輸血用採血ならびに保存に適していることが明らかとなった。猫の輸血用血液製剤の保存期間中の品質を維持することは、猫の輸血療法の発展にとって必要不可欠である。

 
 
 

最新記事

すべて表示
犬の献血バスの運用

今回紹介する論文は犬の献血バスの運用に関するもので、韓国の建国大学がヒュンダイ社のソラティという15人乗りくらいのサイズの車両をベースに犬用の献血バスを作製しています。トヨタ社のハイエースより一回り大きい全長約6mの車両のようなので、献血件数を重視する場合は手狭であったようですが、献血バスの導入としては必要十分であったように筆者たちも述べています。今後、日本においても犬の献血バスが稼働するようにな

 
 
 
輸血と感染症2

以前、 イタリアの動物用血液バンクでの節足動物媒介性の病原体保有率に関する報告 を紹介しましたが、今回は同時期に発表されていたカナダの血液バンクでの報告となります。犬において バベシア や ヘモプラズマ が輸血によって感染した報告がありますので、感染症のスクリーニング検査をどこまで、あるいはどの頻度で行っていくのかは議論の尽きないところです。 手前味噌ではありますが、きたる2026年5月24日の日

 
 
 
赤血球の保存温度と時間

全血や赤血球製剤を保存する場合は冷蔵保存が原則とされており、保存されていた血液を使用する場合、細菌増殖リスクを懸念して4時間以内に終わらせる「4時間ルール」があることは以前 別の記事 で紹介させていただきました。しかしその記事において研究対象とされていたのは血漿製剤であり、室温で12時間かけての投与に不都合はなかったとしていますが、全血や赤血球製剤は細菌増殖だけでなく溶血リスクのことも考慮しなけれ

 
 
 

コメント


日本獣医輸血研究会 事務局

〒272-0141千葉県市川市香取1丁目4番10号 株式会社wizoo内

TEL: 047-314-8377

Mail: info@jsvtm.org

bottom of page