top of page

血腹と回収血輸血

更新日:2023年8月17日

今回の論文は、皆様も頭を抱えている問題である脾臓血管肉腫による腹腔内出血の救命率向上に寄与するものです。多くの動物病院で血液不足が叫ばれるなか、救急で運ばれてくる脾臓腫瘍破裂による腹腔内出血の治療は、判断に悩むケースの一つかと思います。実際、血液が無いと周術期のリスクが高い為、他院を紹介する例も少なくありません。しかしながら、本研究で紹介されているセルサルベージ(自己血回収)システムならびに白血球除去フィルターを使うことで、腫瘍の播種リスクを抑えながら、比較的安全に回収血輸血を実施することが出来るかもしれません。(担当:荻野、瀬川、青木)

※2020年12月更新※


セルサルベージシステムと白血球除去フィルターを用いた血管肉腫細胞の除去


著者:Ciepluch B, Wilson-Robles H, Levine G, Smith R, Wright GA, Miller T, O'Brien MT, Thieman Mankin KM.

掲載誌:Vet Surg. 2018 Feb;47(2):293-301. PMID:29247544

目的:術中セルサルベージ(IOCS)システムと白血球除去フィルター(LRF)が犬の血液から血管肉腫(HSA)細胞を除去できるか評価する。

研究デザイン:術中の出血や脾臓HSA破裂による腹腔内出血をシミュレーションする為、培養したHSA細胞に犬の血液を添加し、HSA細胞と血液の混合液をIOCSシステムで処理した後、LRFで処理を行った

サンプル数:3頭の健常犬の血液を培養HSA細胞と混合した。

方法:1ml中に50個のHSA細胞を含む濃度でHSA細胞と血液の混合液を調整し、定量的RT-PCR、マルチパラメーターフローサイトメトリー、細胞診によりそれらのHSA細胞を検出可能か確認した。また、混合液処理過程の4工程でHSA細胞を検出可能か評価した。

結果:コントロールとIOCS処理後の検体では、HSA細胞がいずれの方法でも検出されたが、IOCS処理後にLRF処理を併用した検体ではHSA細胞が検出されなかった。

結論:犬の血液でIOCS処理後にLRF処理を実施することにより、培養HSA細胞を除去することが可能であった。したがって、IOCS処理にLRF処理を加えることにより、HSA罹患犬に回収血輸血を安全に実施することができるかもしれない。

臨床的意義:IOCS処理とLRF処理を組み合わせることで、HSAによる腹腔内出血の際に輸血に代わって回収血を使用出来る可能性が示唆された。


 
 
 

最新記事

すべて表示
献血ドナー犬の合併症調査

以前、献血ドナー猫の合併症調査に関する文献を紹介しましたが、今回は犬の献血における合併症を調査した研究報告となります。本文から少し抜粋すると、1年の間にドナー犬2,776頭、献血回数は合計4,439件と多くのケースを集めておりますが、合併症の発生頻度は37件(0.83%)と低頻度に抑えられていて目を見張るものがあります。筆者たちも考察していましたが、トレーニングを受けた動物用血液バンクのスタッフが

 
 
 
犬の献血バスの運用

今回紹介する論文は犬の献血バスの運用に関するもので、韓国の建国大学がヒュンダイ社のソラティという15人乗りくらいのサイズの車両をベースに犬用の献血バスを作製しています。トヨタ社のハイエースより一回り大きい全長約6mの車両のようなので、献血件数を重視する場合は手狭であったようですが、献血バスの導入としては必要十分であったように筆者たちも述べています。今後、日本においても犬の献血バスが稼働するようにな

 
 
 
輸血と感染症2

以前、 イタリアの動物用血液バンクでの節足動物媒介性の病原体保有率に関する報告 を紹介しましたが、今回は同時期に発表されていたカナダの血液バンクでの報告となります。犬において バベシア や ヘモプラズマ が輸血によって感染した報告がありますので、感染症のスクリーニング検査をどこまで、あるいはどの頻度で行っていくのかは議論の尽きないところです。 手前味噌ではありますが、きたる2026年5月24日の日

 
 
 

コメント


日本獣医輸血研究会 事務局

〒272-0141千葉県市川市香取1丁目4番10号 株式会社wizoo内

TEL: 047-314-8377

Mail: info@jsvtm.org

bottom of page