top of page

Journal閲覧数トップはヒト-アルブミン製剤

更新日:2023年8月17日


皆様こんにちは。Journal clubを開始してから、早いもので一年が過ぎていました。これまで輸血療法に関する様々な文献を紹介して参りましたが、その中でも閲覧数トップは、「イヌに対するヒト-アルブミン製剤の投与」でした。


輸血というと、個人的には赤血球の補充を目的とした輸血が中心と考えていたので、これは想定外の結果でした。皆様の関心の高さを受けて、今回はアルブミン製剤に関する海外の情報を複数ピックアップしてまとめてみました。


なお、まとめていて感じたのですが、用法や用量、副作用の情報などは文献によって非常にばらつきがあります。救急の場面なのか、時間的に余裕がある場面なのかによって大きく変わるのだろうと思うのですが、参考にして頂ければ幸いです。(担当: 瀬川、中村、小林、森下)


J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2016 Jul;26(4):587-92. PMID: 27159733


この文献は以前に紹介させて頂いたものです。蛋白漏出性腸症の犬21症例に対して、25%ヒト-アルブミン製剤を投与した回顧的研究です。


アルブミン製剤の適応症例は血中アルブミン濃度が1.5g/dL未満に低下、あるいは腹水など

血管外に液体貯留がみられた場合としています。


投与方法は、まず全症例で25%ヒト-アルブミン製剤0.25mL/kgを10分間かけて試験的に投与し、急性期の合併症の有無を確認しています。その後、2mL/kgを20-30分間かけて投与しています。21症例中、15症例は2回以上のヒト-アルブミン製剤の輸血を実施したそうです。


2症例(9.5%)で初回輸血から24時間以内に急性副反応を認め、1症例は嘔吐を2回、もう1症例は輸血12時間後に肺血栓塞栓症を疑う努力性呼吸がみられるようになり、結果的に安楽死されたとあります。その他の2症例もやはり初回輸血から14日間以内に遅発性副反応を認め、1症例は輸血3日後に腹大動脈血栓塞栓症、もう1症例は輸血11日後に食欲廃絶、発熱を呈して結果的に安楽死されたとあります。


いずれの副反応もヒト-アルブミン製剤輸血との因果関係は不明であり、ステロイド投与による副反応予防効果は明らかでなかったそうです。



細菌性腹膜炎の犬22症例に対して、25%ヒト-アルブミン製剤を投与した回顧的研究です。


文献内で投与方法の詳細には触れられていませんが、投与量は平均10.2mL/kg (標準偏差6.6mL/kg)、投与時間は平均39.2時間 (標準偏差23.8時間)とあります。


輸血前の血中アルブミン濃度平均値が2.1g/dL (標準偏差0.57g/dL)であったのに対し、測定タイミングは明記されていませんが輸血後の血中アルブミン濃度平均値は2.4g/dL (標準偏差0.68g/dL)であり、あわせて測定した膠質浸透圧も上昇したようです。


この研究内でヒト-アルブミン製剤の副作用についてはあまり言及されていませんでしたが、1の文献と比較してかなり高用量で投与していても、目立った副作用はみられなかった様子です。


J Am Vet Med Assoc. 2008 Aug 15;233(4):607-12. PMID: 18710318


少し古い文献ですが、消化管穿孔による細菌性腹膜炎など、容態の悪い犬73症例に対して25%ヒトーアルブミン製剤を投与した回顧的研究です。


文献内に用法が細かく書かれており、まずは生理食塩水で25%ヒト-アルブミン製剤を10%まで希釈した上、輸血用フィルターを介して投与したとあります。投与量の中央値は1.4g/kg (25%ヒト-アルブミン製剤にして5.6mL/kg)だったようです。


2の文献と同様に血中アルブミン濃度の上昇や膠質浸透圧の上昇など良好な結果が得られた一方、程度は様々ですが73症例中、20症例 (27%)でヒト-アルブミン製剤と因果関係が疑わしい副作用がみられたと記載されています。軽度なものでは呼吸数や心拍数の増加、体温上昇などですが、重度なものでは投与24時間以内に血液凝固障害が1症例、心停止が4症例で認められたようです。また、3症例で投与5-14日以内に浮腫、掻痒、血管炎などの遅発性副反応を疑わせるような症状がみられたとあります。


筆者達は用法用量に関して文献の考察内でもう少し詳しく述べており、血中アルブミン濃度を2.0-2.5g/dLに増加させることを目標として、


アルブミン必要量 (g) =

10 × (血中アルブミン濃度目標値 - 症例の血中アルブミン濃度) × 体重 (kg) × 0.3


という計算式で算出することが多かったとしています。その上で、上述したように25%ヒト-アルブミン製剤を生理食塩水により10%まで希釈し、輸血用フィルターを介して12時間かけて投与したと記載されています。




閲覧数:1,243回0件のコメント

最新記事

すべて表示

輸血適応疾患の検討: 猫の尿道閉塞

今回紹介する論文は、猫の尿道閉塞と輸血に関するものです。タイトルだけみた際、個人的な経験則では尿道閉塞と輸血は直接的に結びつかないように思ったのですが、やはり本文をみても尿道閉塞の症例に輸血を実施するケースは2.1%と低頻度でした。 しかしながら、会陰尿道造瘻術を行う症例は輸血実施について警戒する必要があり、輸血が必要な症例は残念ながら死亡退院となる危険性が高まるなど、重篤な症例ほど輸血適応が無視

輸血適応疾患の検討: 犬の免疫介在性血小板減少症

前回に引き続き、今回も輸血について直接研究した論文ではありませんが、輸血適応について考えることをテーマとして犬の免疫介在性血小板減少症(ITP)に関する論文を取り上げたいと思います。この2024年5月にACVIMからITPの診断に関するコンセンサスが発表されましたのでITPは現在とても話題性の高い疾患です。 今回紹介する論文の中で、一次性ITPの血小板数は中央値5,500/µL(範囲0-26,00

輸血適応疾患の検討: 犬のセルトリ細胞腫

今回紹介する論文は犬の骨髄抑制を伴うセルトリ細胞腫症例の治療成績を報告したものです。直接的に輸血について研究した論文ではありませんが、セルトリ細胞腫による汎血球減少を呈した症例に対する輸血適応や輸血用血液の準備を考える上で非常に重要と思われます。本文をみると初診時のヘマトクリット値が8.8%の症例もいれば49.3%の症例もいるようで、かなりばらつきはありますが、皆様の日頃の診療の参考になれば幸いで

Comments


bottom of page