top of page

ついにDal抗原のモノクローナル抗体が登場

更新日:2023年8月17日

犬の血液型というとDEA1.1が最も有名ですが、その次に話題に挙がってくるものは「Dal」ではないでしょうか?以前、当サイトでもDalについては紹介させて頂きましたが、急性溶血性輸血反応につながる危険性のある抗原とみられているので注意が必要です。

これまで、Dalはポリクローナル抗体で判定していましたが、今回、カナダの研究グループがついにモノクローナル抗体を作り出したそうです。このまま産学連携していけたら、近い将来、日本でも外注検査や院内の血液型判定キットでDalが調べられるようになるんだろうかと期待しています。今後の世界の動向に注目したい研究成果なのでぜひご覧下さい。

(担当: 瀬川)


犬の血液型判定に用いるマウス抗Dalモノクローナル抗体の作製とその特徴


著者: Cindy L Corrales Mesa, Marcelo Gottschalk, Sonia Lacouture, Marie-Claude Blais.


掲載誌: Vet Immunol Immunopathol. 2022 Dec;254:110516. PMID: 36459960


背景と目的: Dalはその抗原性の強さの一方、98%以上の犬がその抗原を保有していることから、輸血歴のあるDal陰性犬に適合血を用意することは困難とされている。そして現在はDal抗原に感作された犬から作製したポリクローナル抗体(PAb)試薬しかなく、その試薬の入手の難しさからDal適合血の用意はさらに困難となっている。したがって、本研究の目的はマウス抗Dalモノクローナル抗体(MAb)の作製とその特徴を評価することとした。


方法: 従来から用いられているハイブリドーマの技術を用いて、犬の赤血球(cRBC)に対するMAbを作製した。その概略としては、まずDal陽性の洗浄cRBC(DEA1、3、7陰性、DEA4、5陽性)を雌のBALB/cマウスに繰り返し腹腔内投与し、血清抗体価が充分上昇(>1:1000)するまで免疫感作した。その後、マウスのリンパ球と骨髄腫細胞を融合させ、ハイブリドーマの培養上清を573検体作製した。その培養上清をDal陰性cRBC、Dal陽性cRBCに対してゲルカラム法で反応させ、目的とするMAbが作製できたか判定を行った。


結果: 上記の培養上清のうち15検体がcRBCを凝集させたが、Dal抗原に対して反応したものは1検体のみであった。そのMAbの感度と特異度を評価するため、62頭の犬のEDTA血と2種類の抗Dal PAbを用意して検査を行ったところ、いずれの試薬もDal陽性が45頭、陰性が17頭であり、完全に一致した。そして、今回作製した抗Dal MAbのサブクラスはIgG1であることを確認した。


結論: ハイブリドーマ技術とゲルカラム法を用いてマウス抗Dal MAbを作製することができた。本研究によりDalの血液型判定が永続的に可能となり、臨床や研究において有効活用されることが期待される。また、Dal陰性犬をDal抗原に感作させてPAbを作製する必要がなくなることも有用と思われる。


図1. 2頭の犬(DIVA、401209)のDal判定結果。判定には2種類のポリクローナル抗体(Dalia、Dallas)と今回作製したモノクローナル抗体(p96)を用いている。左の3検体はDIVAという犬に対する結果であり、いずれの抗体もDal陰性の結果であった。一方、右の3検体は401209という犬に対する結果であり、Daliaは4+、Dallasとp96は3+でいずれもDal陽性の結果であった。


 
 
 

最新記事

すべて表示
猫と犬の異種間交差適合試験

以前、犬の濃厚赤血球液を猫に異種間輸血した文献を紹介しましたが、今回はIn vitroにおける猫と犬の異種間での交差適合性について着目した研究です。結果、あくまでIn vitroではありますが、B型猫はA型猫よりも犬の血球の方が3.4倍も適合しやすいという内容に大変驚かされました。特にB型猫は遭遇頻度が低くドナーの確保が困難となりますので、危機的出血時など一刻を争う場面で「不適合と分かっているA型

 
 
 
輸血適応疾患の検討: 犬と猫の殺鼠剤中毒

殺鼠剤は急性毒剤と抗凝血剤に大別されますが、獣医療において殺鼠剤中毒というとワルファリンなどクマリン系の抗凝血剤が有名です。クマリン系の殺鼠剤はビタミンKの代謝拮抗剤であり、活性化にビタミンKが必要な凝固第II、VII、IX、X因子を阻害することでその効果を発揮します。したがって、輸血による活性化凝固因子の補充や貧血の是正、ビタミンKの投与がクマリン系殺鼠剤中毒の治療として考えられていますが、以前

 
 
 
献血ドナー犬の合併症調査

以前、献血ドナー猫の合併症調査に関する文献を紹介しましたが、今回は犬の献血における合併症を調査した研究報告となります。本文から少し抜粋すると、1年の間にドナー犬2,776頭、献血回数は合計4,439件と多くのケースを集めておりますが、合併症の発生頻度は37件(0.83%)と低頻度に抑えられていて目を見張るものがあります。筆者たちも考察していましたが、トレーニングを受けた動物用血液バンクのスタッフが

 
 
 

コメント


日本獣医輸血研究会 事務局

お問合せ先

Mail: info@jsvtm.org

bottom of page